【法律】最高裁による「マンション理事長の解任について、理事会決議だけで解任可能」の判決に関する考察について

投稿日:2017/12/19

 

 

 概要 

マンション管理組合の理事会が、理事長を解任できるか争われた訴訟で、

最高裁第一小法廷は、解任は無効とした二審判決を破棄し、「選任は原則、理事会に委ねられており、理事会の過半数による解任も理事に委ねられている」として、

総会決議を要せず、理事会が理事長を解任できることについて、初判断を示しました。(2017.12.18)

 

 

 背景 

業務委託する管理会社を変更するか否かについて、理事長と他の理事らが対立する中、理事会の決議により理事長を解任。

しかし、マンションの管理規約では、「理事長は理事の互選により選任する」と定めるだけで、理事長の解任については定められておらず、理事会による理事長の解任の可否(有効・無効)が争われました。

 

 

 ポイント 

①今回、「理事の地位」までを解任するものでなく、「理事長の地位のみ」を解任するというものでした。

理事の解任については、今回、訴訟の対象となっておらず、理事長のみの地位の解任が争点でした。(実際に、本事案では、理事解任まではしていないようです。)

なお、理事の選任ついては、国土交通省の標準管理規約において「理事は総会で選任する」との定めとなっています。

そのため、理事会は理事を選任する権限なく、理事の解任についても、総会において決議しなければならないと解釈されています。

 

②今回、「理事長は、・・・理事の互選により選任する」と定められていました。

国土交通省の標準約款が「理事の互選により選任する」定めとなっているため、ほとんどのマンション管理規約でも同様の定めとなっているかと思います。

しかし、もし仮に「理事長は総会で選任する」と定めている場合、本判決の射程外です。この場合にまで、理事会が理事長を解任できるとは判断できません。

(本判決の趣旨を踏まえると、総会で選任した理事長は、総会で解任することになります。)

 

③今回、管理規約に「解任の定め」がありませんでした。

例えば、「理事の互選により選任及び解任する」等と定められていれば、解任権がどこにあるかが明確です。

また、理事の互選で理事長を選任し、解任については総会で決議する、といった規定も可能だとと思われ、その場合は総会で解任することになります。

こうした規定が無かったため、今回、最高裁まで持ち込まれることになりました。(なお、争いとなった事案は2013年に起こったものです。)

最高裁判決による判断がでたから規約変更しなくていいというわけではなく、できるだけ個々の規約で明確化しておくことが、後々のトラブルの回避に重要と思います。

 

 

 株式会社ではどういう扱いになっているの? 

 

①取締役会設置会社について

取締役会を設置している会社では、取締役会の権限等として、会社法に以下の定めがあります。

第362条(取締役会の権限等)

二 取締役会は次に掲げる職務を行う。

③ 代表取締役の選定及び解職

このように、取締役会設置会社では、代表取締役の解職権限が法定されているため、解職権限についてよりも、解職の手続きについて争われることが多いです。

 

②取締役会非設置会社について

取締役会を設置していない会社では、(1)定款、(2)定款の定めに基づく取締役の互選、(3)定款の定めに基づく株主総会の決議によって、代表取締役を選ぶことができます。

上記(1)~(3)により、代表取締役の解任方法も異なってきます。

 

(1)定款の場合

定款で代表取締役を定めている以上、定款変更の手続きが必要となります。

なお、定款変更は、株主総会による特別決議によらなければなりません。

 

(2)定款の定めに基づく取締役の互選

マンション管理規約の事案と同様、会社法上、解任権限がどこにあるか具体的に規定されていません。

マンション管理規約に関する本判決を踏まえると、取締役の過半数の決議で代表取締役の解任が可能と解釈できると思われます。

ただし、会社法第295条第1項において、株主総会は株式会社の一切の事項について決議することができる(取締役会設置会社を除く)、との規定があることから、定款上に解任権限の定めがない場合は、同条を根拠に株主総会に解任権限があるとの解釈も可能かもしれません。

(マンション管理組合の規定がある区分所有法では、第25条に、規約に別段の定めがない限り集会の決議によって管理者[規約で「管理者=理事長」とすることが一般的]を選任し又は解任することができる、との規定がありました。二審は、この規定を基に、規約に解任の定めはないので集会の決議による(理事会での解任は無効)、と判断したと思われますが、最高裁では、規約で理事会に選任権限を定めているということは解任の権限も同様に委ねられていることになる、と判断したのだと思われます。)

なお、取締役会を設置していない会社は、同族会社で株主と取締役が同じメンバーのことが多く、円滑に辞任で進める場合や、いざ解任する際は、株主総会決議により取締役の地位まで解任してしまうことが多いのではないかと推察されます。

(マンション管理組合の総会は、居住者をメンバーとする多種多様な構成員によるものであり、ここに、こうした株式会社と運営上の違いがあるのかもしれません。)

 

(3)定款の定めに基づく株主総会の決議

株主総会の決議により選ばれた代表取締役は、取締役と代表取締役の地位が未分離のまま選任され、取締役の地位と代表取締役の地位が一体化しているとされています。

そのため、例えば、取締役としては残り代表取締役のみ辞任する場合、本人の意志だけで辞任できず、株主総会の承認決議が必要となります。(代表取締役の地位を外してもらうための承認)

上記を踏まえると、代表取締役の解任についても、株主総会決議でしか解任できないということになるでしょう。

 

 

 最後に 

解任の規定等がない場合、選任権限を持つところが解任権限も有する、といった原則を、今回の最高裁の判決は示したと言えるかもしれません。

「結局、当然のことを言ってるだけじゃない?」と思われるかもしれませんが、二審までは「解任は無効」といった判決が出ていたように、法律で物事を考えたり、法律上どうやって認めてもらうかは、なかなか大変なことだったりします。

でもそこが、法的な視点を持つことの面白さでもあったりします。