【法律】民法(債権法)改正に係る各条項について③(代理)

投稿日:2017/06/21

平成29年5月26日に改正された民法について、

改正された項目を数回に分けて個別に見ていこうと思います。

今回は、以下となります。

第4 代理

 

なお、記載順は、「法律案要綱」の記載に基づいています。

(参考:法制審議会 – 民法(債権関係)部会資料)

 

<第4 代理>

 

[代理行為の瑕疵]

【新】

(代理行為の瑕疵)
第百一条 代理人が相手方に対してした意思表示の効力が意思の不存在、錯誤、詐欺、強迫又はある事情を知っていたこと若しくは知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、代理人について決するものとする。

2 相手方が代理人に対してした意思表示の効力が意思表示を受けた者がある事情を知っていたこと又は知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、代理人について決するものとする。

 特定の法律行為をすることを委託された代理人がその行為をしたときは、本人は、自ら知っていた事情について代理人が知らなかったことを主張することができない。本人が過失によって知らなかった事情についても、同様とする。

【旧】

(代理行為の瑕疵)
第百一条 意思表示の効力が意思の不存在、詐欺、強迫又はある事情を知っていたこと若しくは知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、代理人について決するものとする。

(新設)

2 特定の法律行為をすることを委託された場合において、代理人が本人の指図に従ってその行為をしたときは、本人は、自ら知っていた事情について代理人が知らなかったことを主張することができない。本人が過失によって知らなかった事情についても、同様とする。

 

《考察》

代理人の意思表示に関する規律と、相手方の意思表示に関する規律とを分けて定められ、また、第1項に錯誤が追加されました。

さらに、「本人の指図に従って」という部分を削られました。これは、判例(大判明治41年6月10日民録14輯665頁)において、特定の法律行為の委託があれば本人の指図があったことは要件としない旨を判示しており、この判例法理が明文化されることとなりました。

 

[代理人の行為能力]

【新】

(代理人の行為能力)
第百二条 制限行為能力者が代理人としてした行為は、行為能力の制限によっては取り消すことができない。ただし、制限行為能力者が他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為については、この限りでない。

【旧】

(代理人の行為能力)
第百二条 代理人は、行為能力者であることを要しない。

 

《考察》

制限行為能力者が代理人である場合でも、その者が代理人としてした行為は、行為能力の制限によっては取り消すことができない旨、明確にされました。

ただし、制限行為能力者が「法定代理人」となった場合には、本人が法定代理人の選任に直接関与するわけではないため、本人の保護という制限行為能力制度の目的が十分に達せられないおそれがあり、取消しを認めることとしました。

 

 

[※上記に関連する改正事項]

【新】

(保佐人の同意を要する行為等)
第十三条 (略)
十 前各号に掲げる行為を制限行為能力者(未成年者、成年被 後見人、被保佐人 及び第十七条第一項の審判を受けた被補助人をいう。以下同じ。)の法定代理人としてすること。

【旧】

(新設)

 

《考察》

改正により、新たに新設された規定です。

制限行為能力者が(任意)代理人としてした行為は、行為能力の制限によっては取り消すことはできないですが、被保佐人が、13条前各号に掲げる行為を他の制限行為能力者の「法定代理人」として行った場合には、保佐人の同意を要することとなります。(同意がない場合は、取り消すことができます。[13条4項])

 

[復代理人を選任した任意代理人の責任]

【新】

(削除)

(法定代理人による復代理人の選任)
第百五条 法定代理人は、自己の責任で復代理人を選任することができる。この場合において、やむを得ない事由があるときは 、本人に対してその選任及び監督についての責任のみを負う。

(復代理人の権限等)
第百六条 (略)
2 復代理人は、本人及び第三者に対して、その権限の範囲内において、代理人と同一の権利を有し、義務を負う。

【旧】

(復代理人を選任した代理人の責任)
第百五条 代理人は、前条の規定により復代理人を選任したときは、その選任及び監督について、本人に対してその責任を負う 。

2 代理人は、本人の指名に従って復代理人を選任したときは、前項の責任を負わない。ただし、その代理人が、復代理人が不適任又は不誠実であることを知りながら、その旨を本人に通知し又は復代理人を解任することを怠ったときは、この限りでない。

(法定代理人による復代理人の選任)
第百六条 法定代理人は、自己の責任で復代理人を選任することができる。この場合において、やむを得ない事由があるときは 、前条第一項の責任のみを負う。

(復代理人の権限等)
第百七条 (略)
2 復代理人は、本人及び第三者に対して、代理人と同一の権利を有し、義務を負う。

 

《考察》

これまで、復代理人を選任した任意代理人の責任については、「本人の許諾を得たもの」又は「やむを得ない事由によるもの」であれば、それだけで一律に任意代理人は復代理人の選任及び監督の責任のみを負えば足り、また、その復代理人の選任が「本人の指名に従ったもの」であれば、それだけで一律に任意代理人は復代理人に対する監督の責任すら負わないとされていました。しかし、この結論が常に妥当であるかについては疑問があるとされ、責任を負うかどうかは、債務不履行の一般原則に従って、事案ごとに柔軟な判断がされるのが相当であるとされました。これにより、当該条項は削除され、復代理人を選任した代理人の責任は、債務不履行の一般原則に委ねられることになりました。 

これに伴い、法定代理人に関する規定については、「前条第一項」自体が削除され引用できなくなったことから、「本人に対してその選任及び監督について」との文言が直接記載されることになりました。

また、復代理人の権限について、復代理人が代理人よりも広い範囲の代理権を有することは理論上ありえないと言われていたところ、それを明確化するために、「その権限の範囲内において」との文言が加えられました。

 

[自己契約及び双方代理等]

【新】

(自己契約及び双方代理等)
第百八条 同一の法律行為について、相手方の代理人として、又は当事者双方の代理人としてした行為は、代理権を有しない者がした行為とみなす。ただし、債務の履行及び本人があらかじめ許諾した行為については、この限りでない。

2 前項本文に規定するもののほか、代理人と本人との利益が相反する行為については、代理権を有しない者がした行為とみなす。ただし、本人があらかじめ許諾した行為については、この限りでない。

【旧】

(自己契約及び双方代理)
第百八条 同一の法律行為については、相手方の代理人となり、又は当事者双方の代理人となることはできない。ただし、債務の履行及び本人があらかじめ許諾した行為については、この限りでない。

(新設)

 

《考察》

これまで、違反の効果については明記していませんでしたが、判例(最判昭和47年4月4日民集26巻3号373頁等)が、自己契約及び双方代理の効果は無権代理と同様に扱う旨を判示しおり、この判例法理を明文化しました。

また、自己契約及び双方代理に該当しない利益相反行為の禁止については明記されていませんでしたが、形式的には自己契約及び双方代理に該当しない行為であっても、代理人と本人との利益が相反する行為については、同条の規律が及ぶと解されていました。そのため、自己契約及び双方代理に該当しない利益相反行為についても、代理権を有しない者がした行為とみなすことが明確にされました。なお、利益相反行為であるかの判断について、代理行為自体を外形的・客観的に考察して行われる(最大判昭和42年4月18日民集21巻3号671頁参照)ことに変更はありません。

 

[代理権の濫用]

【新】

(代理権の濫用)
第百七条 代理人が自己又は第三者の利益を図る目的で代理権の範囲内の行為をした場合において、相手方がその目的を知り、又は知ることができたときは、その行為は、代理権を有しない者がした行為とみなす。

【旧】

(新設)

 

《考察》

これまで、代理権の範囲内における代理権濫用行為についての規定はありませんでした。判例は、代理権濫用行為について民法第93条ただし書を類推適用する旨判示していますが、代理権濫用行為に関する規定がない中で、代理人の内心の目的を相手方が知り又は知ることができた場合という要件を用いて事案の適切な解決を図るために、同条ただし書を類推適用するという形をとったものでした。そこで、代理権の範囲内の行為であるがその効果が否定されるものとして、第108条に加えて、代理権濫用行為に関する規定が新設されました。

その効果と要件としては、代理権濫用行為は代理権の範囲内の行為であるため、その代理行為の効果は本人に帰属するのが原則であり、例外的に、相手方が代理人の濫用目的を知り又は知ることができた場合に限り、その代理行為の効果が否定される(無権代理)とされました。

 

[代理権授与の表示による表見代理]

【新】

(代理権授与の表示による表見代理等)
第百九条 (略)
2 第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間で行為をしたとすれば前項の規定によりその責任を負うべき場合において、その他人が第三者との間でその代理権の範囲外の行為をしたときは、第三者がその行為についてその他人の代理権があると信ずべき正当な理由があるときに限り、その行為についての責任を負う。

【旧】

(代理権授与の表示による表見代理)
第百九条 (略)

(新設)

 

《考察》

第109条第1項は、代理権は授与されていませんが代理権授与の表示がされている場合において、相手方がその代理権が授与されていないことにつき善意無過失であったときは、その代理権があったのと同様の責任を本人に負担させる(表見代理を成立させる)もので、判例法理において、第110条の要件である基本代理権の授与に代えて第109条の表見代理の成立を主張するという重畳適用の場面においても機能してきました。第2項の新設は、判例法理によって確立してきた、第109条と第110条の重畳適用が認められることを、条文上明確にするものです。

(出典:法務省 法制審議会 – 民法(債権関係)部会資料)

 

[※上記に関連する改正事項]

【新】

(権限外の行為の表見代理)
第百十条 前条第一項本文の規定は、代理人がその権限外の行為をした場合において、第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときについて準用する。

【旧】

(権限外の行為の表見代理)
第百十条 前条本文の規定は、代理人がその権限外の行為をした場合において、第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときについて準用する。

 

《考察》

前条第109条の改正に伴う引用条項の改正です。

 

[代理権消滅後の表見代理]

【新】

(代理権消滅後の表見代理等)
第百十二条 他人に代理権を与えた者は、代理権の消滅後にその代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、代理権の消滅の事実を知らなかった第三者に対してその責任を負う。ただし、第三者が過失によってその事実を知らなかったときは、この限りでない。

2 他人に代理権を与えた者は、代理権の消滅後に、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間で行為をしたとすれば前項の規定によりその責任を負うべき場合において、その他人が第三者との間でその代理権の範囲外の行為をしたときは、第三者がその行為についてその他人の代理権があると信ずべき正当な理由があるときに限り、その行為についての責任を負う 。

【旧】

(代理権消滅後の表見代理)
第百十二条 代理権の消滅は、善意の第三者に対抗することができない。ただし、第三者が過失によってその事実を知らなかったときは、この限りでない。

 

《考察》

「善意」の意味が曖昧でしたが、「過去に存在した代理権が代理行為の前に消滅したことを知らなかったこと」であることを明確にしました。

また、第112条は、判例法理において、第110条の要件である基本代理権の授与に代えて第112条の表見代理の成立を主張するという重畳適用の場面においても機能してきました。第2項の新設は、判例法理によって確立してきた、第109条と第110条の重畳適用が認められることを、条文上明確にするものです。

(出典:法務省 法制審議会 – 民法(債権関係)部会資料)

 

[無権代理人の責任]

【新】

(無権代理人の責任)
第百十七条 他人の代理人として契約をした者は、自己の代理権を証明したとき、又は本人の追認を得たときを除き、相手方の選択に従い、相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負う。

2 前項の規定は、次に掲げる場合には、適用しない。

一 他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が知っていたとき。
二 他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が過失によって知らなかったとき。ただし、他人の代理人として契約をした者が自己に代理権がないことを知っていたときは、この限りでない。
三 他人の代理人として契約をした者が行為能力の制限を受けていたとき。

【旧】

(無権代理人の責任)
第百十七条 他人の代理人として契約をした者は、自己の代理権を証明することができず、かつ、本人の追認を得ることができなかったときは、相手方の選択に従い、相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負う。

2 前項の規定は、他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が知っていたとき、若しくは過失によって知らなかったとき、又は他人の代理人として契約をした者が行為能力を有しなかったときは、適用しない。

 

《考察》

主張立証責任の所在について疑義を生じていたところ、代理人が自己の代理権を証明したこと又は本人の追認を得たことが、無権代理人の責任を免れるための積極要件であることを明確にしました。

また、無権代理人が自己に代理権がないことを知っていた場合には、無権代理人と相手方との利益衡量という観点から相手方に過失があったとしても、無権代理人の責任を否定すべきではなく、無権代理人の責任を認めることとされました。

 

 

本日はここまでです。