【法律】民法(債権法)改正に係る各条項について②(意思表示(続き))

投稿日:2017/06/11

平成29年5月26日に改正された民法について、改正された項目を

数回に分けて個別に見ていこうと思います。

今回は、以下となります。

第3 意思表示(続き)

なお、記載順は、「法律案要綱」の記載に基づいています。

(参考:法制審議会 – 民法(債権関係)部会資料)

 

 <第3 意思表示> 

 

[詐欺]

【新】

(詐欺又は強迫)
第九十六条 (略)
2 相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知り、又は知ることができたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。
3 前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。

【旧】

(詐欺又は強迫)
第九十六条 (略)
2 相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知っていたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。
3 前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意の第三者に対抗することができない。

 

《考察》

相手方に過失があった場合の取り消しについては条文上明確ではなく、確立した判例法理もなかったことから、解釈上疑義が生じていました。一方、心裡留保においては、相手方に過失があれば意思表示が無効とされることから、これとの均衡を考慮し、相手方が詐欺の事実を知らなかったことについて過失があった場合には、意思表示を取り消すことができることとされました。 

また、第三者保護要件についても、過失について条文上明確ではなく確立した判例法理もないことから、解釈上疑義が生じていました。詐欺による意思表示をした者は不当な行為の被害者という面があり帰責性が小さいことから、第三者保護要件として、知らなかったことについて過失がないことを要件とするのが相当であると考え、「善意」を「善意でかつ過失がない」に改められました。 

 

[意思表示の効力発生時期等]

【新】

(意思表示の効力発生時期等)
第九十七条 意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる。
2 相手方が正当な理由なく意思表示の通知が到達することを妨げたときは、その通知は、通常到達すべきであった時に到達したものとみなす。
3 意思表示は、表意者が通知を発した後に死亡し、意思能力を喪失し、又は行為能力の制限を受けたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。

【旧】

(隔地者に対する意思表示)
第九十七条 隔地者に対する意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる。
(新設)
2 隔地者に対する意思表示は、表意者が通知を発した後に死亡し、又は行為能力を喪失したときであっても、そのためにその効力を妨げられない。

 

《考察》

隔地者以外の者に対する意思表示の効力発生時期について、規定が設けられていなかったところ、明確にするため「隔地者に対する意思表示」を「相手方に対する意思表示」に改められました。

また、判例では、意思表示が相手方の支配圏内(例えば「郵便受け」など)に置かれるという客観的状態によって「到達」 の有無が判断されますが、たとえ相手方の支配圏内に客観的に入ったとは言えない場合ても、相手方の態様を考慮して到達が擬制されることを明確にしました。

さらに、発信後の表意者の意思能力の喪失については、これまで規定していませんでしたが、明確化するため追加されました。加えて、同項の「行為能力の喪失」は、喪失とは言えない保佐及び補助を含むと解されており、その点を明確にするために、「行為能力を喪失したとき」を「行為能力の制限を受けたとき」に改められました。 

 

[意思表示の受領能力]

【新】

(意思表示の受領能力)
第九十八条の二 意思表示の相手方がその意思表示を受けた時に意思能力を有しなかったとき又は未成年者若しくは成年被後見人であったときは、その意思表示をもってその相手方に対抗することができない。ただし、次に掲げる者がその意思表示を知った後は、この限りでない。
一 相手方の法定代理人
二 意思能力を回復し、又は行為能力者となった相手方

【旧】

(意思表示の受領能力)
第九十八条の二 意思表示の相手方がその意思表示を受けた時に未成年者又は成年被後見人であったときは、その意思表示をもってその相手方に対抗することができない。ただし、その法定代理人がその意思表示を知った後は、この限りでない。
(新設)
(新設)

《考察》

未成年者及び成年被後見人以外の者が、意思能力を欠く状態であ ったとき、その意思表示の対抗の可否については規定が設けられておらず、反対解釈を許容する余地がありました。そこで、意思表示の受領者が、受領時に意思能力を欠く状態であった場合にも、対抗することができないことが明確にされました。

また、相手方が一時的に意思能力を失っていたにすぎず、その後意思能力を回復してその意思表示を知ったときは、自ら適切に対応することができるため除外されました。

 

以上、本日はここまでです。