【法律】民法(債権法)改正に係る各条項について①(公序良俗、意思能力、意思表示)

投稿日:2017/06/02

平成29年5月26日に改正された民法について、改正された項目を

数回に分けて個別に見ていこうと思います。

今回は、以下となります。

第1 公序良俗

第2 意思能力

第3 意思表示

 

なお、記載順は、「法律案要綱」の記載に基づいています。

(参考:法制審議会 – 民法(債権関係)部会資料)

 

 <第1 公序良俗> 

【新】

第九十条 公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。

【旧】

第九十条 公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効と する。

 

《考察》

改正により、「事項を目的とする」という言葉が削除されました。

民法(債権関係)部会資料によると、判例・学説の一般的な理解では、厳密に法律行為が公序良俗に反する事項を目的としているかどうかではなく、法律行為が行われた過程その他の諸事情を考慮して当該法律行為が公序良俗に反しているかどうかが判断 されているところ、「事項を目的とする」という文言は、公序良俗に反する事項を目的とした法律行為に限定して解釈されるおそれがあるとのことで、削除されたようです。

 

 

 <第2 意思能力> 

【新】

第二節 意思能力

第三条の二 法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする

【旧】

(新設)

 

《考察》

改正により、新たに新設された規定です。

意思能力を欠く状態で行われた法律行為の効力が否定されることは、判例・学説上異論のないところですが、これまで明文化した規定はありませんでした。民法(債権関係)部会資料によると、意思能力の有無等が争点となる裁判例も散見されることを踏まえ、新たに明文規定を設けることとなったようです。

 

 

 <第3 意思表示> 

 

[心裡留保]

【新】

第九十 三条 意思表示は、表意者がその真意ではないことを知っ てしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方がその意思表示が表意者の真意ではないことを知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする。
2 前項ただし書の規定による意思表示の無効は、善意の第三者 に対抗することができない。

【旧】

第九十 三条 (略)ただし、相手方が 表意者の真意 を知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする。
(新設)

 

《考察》

相手方が表意者の真意の「内容」まで知らなかったとしても、真意と異なる意思表示をしていることを知り又は知ることができた場合には、無効となる旨が明確化されました。また、第三者保護の規定がこれまでなく、第三者がどのような要件の下で保護されるか、解釈上の疑義が生じていました。今回の改正で、第三者の主観的要件としては善意であれば足り、無過失を要しないことが明文化されました。

 

[錯誤]

【新】

(錯誤)
第九十五条 意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして 重要なものであるときは、取り消すことができる。
一 意思表示に対応する意思を欠く錯誤
二 表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤
2 前項第二号の規定による意思表示の取消しは、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り、 することができる。
3 錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合には、次に掲げる場合を除き、第一項の規定による意思表示の取消しをすることができない。
一 相手方が表意者に錯誤があることを知り、又は重大な過失によって知らなかったとき。
二 相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたとき 。
4 第一項の規定による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。

【旧】

(錯誤)
第九十五条 意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする。ただし、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することができない。

 

《考察》

錯誤により意思表示の効力が否定されるための要件が、判例法理に即したものに改められ、その効果も無効から取消しへ 改められました。また、錯誤による意思表示をした表意者に重過失がある場合でも、相手方がそれを知っていたときや、相手方が同一の錯誤に陥っていたときには、意思表示を取り消せることが明確にされました。さらに、明文化されていなかった第三者保護要件について、明文規定が設けられました。

 

 

 

本日は、ここまでです。

予想以上に、時間がかかる作業でした…